王  敏    中国出身の作家、研究者。法政大学名誉教授、拓殖大学国際日本文化研究所客員教授、桜美林大学大学院国際学術研究科特任教授。アジア共同体文化協力機構参与。研究領域:比較文化研究、国際日本学研究、宮沢賢治研究、日中交流史研究(治水神・禹王研究 周恩来及び中国の日本留学研究)、漢字文明と伝統文化の現代的価値の研究、グローバルコミュニケーション研究。

所長挨拶

中国の初代総理・周恩来(1898-1976)は青春期1917年秋から1919年春にかけて、日本に留学しました。ときあたかも、辛亥革命(1911)から五四運動(1919)へと続く中国近現史における激動期でした。帰国することにしたとき日本を離れる直前、青年周恩来は、桜咲く嵐山を探訪して志情のこもった二つの詩を詠みました。「雨中嵐山」と「雨後嵐山」です。どちらも嵐山を舞台にしています。前作の碑は1978年に実現した日中平和友好条約の記念として、関西の友好団体により嵐山の亀山公園に建立されました。それから半世紀、後編の詩が日中国交回復50周年を記念して2022年4月5日、亀山公園と対座しあう嵐山大悲閣千光寺の境内に、「雨後嵐山」詩碑として建立の機会を得ました。建立の日は青年周恩来が二つの詩を一気に詠みあげた日に合わせました。一世紀を超え詩魂が唱和しているようです。

同時に2022年4月5日に本研究所は設立といたしました。

日本の風土に青春の気迫を吐いた留学生周恩来! 

母国中国の山河を愛しんだ平和の実践者周恩来!

帰国した周恩来が再び日本を訪れることはありませんでした。「日本には非常に美しい文化があり」、周恩来は晩年も日本の桜に思いを馳せました。日本への深い洞察が日中国交回復の原動力になり、人類文明共同体の平和遺産として残されています。

周恩来精神の顕彰・記念を主軸に、漢字文明の伝承及び社会の平和発展に寄与できますよう、各地域の有志と共に励んでまいりたく存じます。ご指導を衷心より願い申します。

2022年9月29日  王 敏